五風十雨

夢創作が好き

夢主ってもしかして、我々のしゅごキャラなんじゃない?

あなたは、「しゅごキャラ!」という漫画をご存知だろうか。「ローゼンメイデン」で有名なPEACH-PIT先生作の、2006〜2010年になかよしで連載されていた少女漫画作品である。
 
 

 

聖夜学園でウワサのスパイシー小学生・日奈森あむ
口下手な性格が災いし、「クール」というキャラが学校で一人歩き・・・。
ほんとうの自分とのギャップに悩む5年生の女の子。
守護霊の存在を信じて、「生まれ変わりたい」と祈った日、
突然、3つのたまごがベッドの中に!
たまごから生まれたのは、ラン・ミキ・スゥの3人の「しゅごキャラ」。
この子たちは、「もう一人の自分」だっていうけど・・・
 
 
 
漫画「しゅごキャラ!」では、「なりたい自分」の願いを持った子供から「しゅごたま」が生まれ、それが孵化するとなりたい自分になるための手伝いをしてくれる「しゅごキャラ」になる。
この記事では、夢主人公・ドリーム主人公(以下、夢主)たちは、我々夢創作を愛好する者たちにとってのしゅごキャラなのではないか?という話をしたいと思う。
前提として、この記事は「すべての創作物は、書き手の願望を広義の意味で反映させた存在である」という思想で書かれていることを承知いただきたい。
 
 
ちなみに、この記事での夢主の定義は以下である。
「夢小説、夢漫画、そのほか夢に関する創作物における、作者によって読者は自分だと思っても思わなくてもよいとされている登場人物」
 
 
 ・しゅごキャラのタイプ
まずしゅごキャラ!の作中では、しゅごキャラには大きく分けて二つのタイプがあると説明されている。
1.まだ自分が未完成で、なりたい自分を探してしゅごキャラが生まれるタイプ
2.いまの自分は完成してるけど、もっと違う新しい自分を探してしゅごキャラが生まれるタイプ
本作の主人公である日奈森あむには三人のしゅごキャラがいるが、いずれもあむとは基本的な性格が違う。これはあむが「素直になれる勇気をください」という願いをかけたことがきっかけで生まれたしゅごキャラたちであり、1.の理由タイプに該当する。
他にも生徒会メンバーである辺里唯世は「もっと強くて違う自分になりたい」という願いからしゅごキャラが生まれたあむと同じ1.のタイプ。
反対に相馬空海は「スポーツが上手く出来るキャラになりたい」、結木ややは「ずっと赤ちゃんみたいに甘えていたい」という願いからしゅごキャラが生まれており、2.のタイプである。
 
 
しゅごキャラを夢主に置き換えると?
これらのタイプを夢創作に置き換えた場合、
1.作者/読者とは立場や能力が大きく違う、憧れるような夢主
2.作者/読者である自分と考え方や能力が同じ。ないし一歩進んだような夢主
の2パターンに分けることが出来る。
1.の場合は「すっごい強い存在になって敵をバッタバッタなぎ倒して味方から尊敬されたい!」「かわいい動物になってのんびり気ままに暮らしてみたい」、
2.の場合は「スポーツを頑張るあの子と同じ部活に入って切磋琢磨したい!」「ご近所さんとしてたまに挨拶を交わすぐらいの仲になりたい」などが例に挙げられる。
夢主といえばおおまかに二つのタイプに分けられることがあるが、1.がいわゆる「オリキャラタイプ」。2.がいわゆる「自己投影タイプ」にわけられるだろう。
筆者が面白いと思うのは、1.2.どちらのタイプであっても作者の願望が反映されていることだ。(もし、自分はまったく違うけど…と、記事の前提から共有できない人がいたらごめん。そういう人の意見も是非聞いてみたいなと思う)。
 
 
創作物というのは作者の考えや空想、何事かに対してのアンチテーゼなどが含まれていたり含まれていなかったりするものなので、作者本人と切り離すことは不可能である。
草稿では、作者と創作物の関係を絡め、どうして夢が好きなのかを一段落用いて語ろうと思っていたのだが、言葉がまとまらないのでそれはまた別の機会にしたいと思う。いやぁ、創作って楽しいなー!(結論)
 
夢主がしゅごキャラのように我々創作者を見守っていると考えたら、それは自分が作った物語からのラブコールだと思う。この記事を書いたひとはそういうものにロマンや、さらなる夢を感じる。夢主夢っていいよね。
 
 
余談だが、この作品にはしゅごたまを生んだ本人が「こんな夢、叶いっこない」と自分にバツを付けてしまうことで生まれる「バツたま」という存在がある。バツたまは自分の持ち主や他者を否定するような、トゲトゲした態度を取ってしまう。これが筆者にはどうにも「夢小説」を「卒業」したひとがかつての「黒歴史」として昔の自分を嘲笑する姿と重なってしまう。冗談だとしても、むしろ冗談であればなおさら。わざわざ自分にバツをつけなくてもいいのではないか?──余談の余談として、自分の黒歴史のフリをして文化全体を嘲笑する様もこと夢創作においては、何故か頻繁にみるのだが……なんとかならないかなと思う。普通にやめてほしい。STOP夢創作差別。
夢を見ることは恥ずかしいことではないし、誰かに笑われるいわれもない。子供っぽいとからかわれることでもないし、謗りをそういうものと受け入れる必要もない。
 
 
なりたいようになればいいじゃん しゅごキャラがついてるよ
やりたいようにやればいいじゃん ぜんぜんオッケーだし
なりたいようになればいいじゃん ひとつだけじゃつまんない
やりたいようにやればいいじゃん なんだってできるよ
引用:アニメ「しゅごキャラ!」一期OP「こころのたまご」より
 
 
勝手に心の応援歌を引用してみたけど……え?!歌詞、いつみても最高……引用なので一部だけなのですが、是非フルで聞いてください。子供の頃に聞いてずっと心の中に残ってたんですけど大人になった今聞いても心の芯にドシンと響く。
一緒にEDの「ホントのじぶん」も聞いてたんですけどいい曲。Buono!ありがとう。
 
 
最後に
しゅごキャラ!は我々に夢と希望と、一歩踏み出す勇気を与えてくれる名作です。あとファッションがとてもオシャレ。
既読の方はもう一度読み返して、未読の方はこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。この記事を書いたひともこの記事を書くにあたって電子書籍版を全巻そろえ直しました。講談社公式に試し読みがありますし、アニメも色んなサービスで配信中です。
 
 
ちなみにこの文章を書いてるひとは二階堂先生とスゥのコンビがとても好きです。よろしくお願いします。
 
 

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人によって「夢小説」の範囲が違うのは、大富豪のローカルルールみたいなもの説

 ちょっと前から思ってたんだけど、人によって夢創作の範囲に関する主張が違うのって、もしかしてUNOとか大富豪*1のローカルルールみたいなもんなんじゃね?
 以前「夢は小説しか夢じゃないし、女主人公かつ無個性主人公*2しか夢じゃない」っていう夢好きの人を見かけた。その人からすればおそらく自分が書いてる「キャラと友情を築く男主人公の夢漫画」とか「キャラと人外夢主*3が言葉通じないまま生活を共にする夢小説」とか、夢じゃないことになる。まぁ書いてる自分が夢で~~~す!!とお出ししてるのであれは夢なんだけど。
 それで、その意見見たときはなにおう、と結構怒りの感情を抱いてたんだけど、時間おいて今までのわかり合えないオタクたちに思いをはせてたら段々ローカルルールのようなものではないのか、という考えが出てきた。


 一番ローカルルールが多いのは大富豪だと思うのでそれで例えてみる。
 中学生までは大富豪の特殊ルールといえば「8切り」「階段しばり」くらいだった。しかし、高校の休み時間、友達と遊んでる時に「都落ち」のルールをはじめて知って、衝撃を受けた。イレブンバックって何?え?スート縛りとか聞いたことないんですけど……。当然のように繰り返される特殊ルールに困惑していると、逆に友達が「8切り」を知らなくて再び衝撃を受けた。最終的には反則上がり(ジョーカーもしくは8で上がると反則)もあったりしたので、それ以来初めてのメンツで大富豪をするときはルール確認が必須になった。

 

 ローカルルールって自分が過ごしてきた環境で知ってる/知らないが別れるので、知らないって事を単純に責められないんですよね。そもそも悪いことではない。なので。例えば今まで男夢主に触れてこなかった人がはじめて見たときに「えっ?男が主人公の夢作品ってあるんだ?」と驚くのは自然なことだと思う。興味があればそこから触れていけば人生がさらに楽しくなること請け負いだよ。ついでにそこから人外夢主とか世界観夢*4にも手を出してみると楽しいと思うよ。


 おおよその人はわかってることだとは思うんだけど、やべーのは相手のフィールドに土足で踏み込んで「お前のこれは夢じゃない」って言っちゃうことだよ。それは誰にも侵す権利はないよ。言ったことがある人は、今日も昨日と同じく月が見られることに感謝した方が良い。
 人外夢読んで「これ夢じゃないですよね?」とかわざわざ言ってきた人間、絶対に許さないからな……。

 それぞれの触れてきた夢があって、それぞれの好きな夢が違って。でもそれらは全て等しく夢であるので、お互いマウントとったり否定したりせずにそれぞれの好きなものを全力で楽しめたらいいね、という話でした。好きな設定やシチュをこねこねして、君だけの夢創作を作り上げよう!
 だってみんなでワイワイ楽しく遊んでるところにそんなの知らない!認めない!ってわめくのめっちゃダサくない?ダサい。

 例えでは大富豪を出したけど、どう夢創作をすべきかってルールがあるわけでもないんだし。もちろん自分の思う夢はこう!って思うのはとても大事なことだよね。自分の意見を持つことと他人の意見を否定しないことは両立できると思います。

 元号も令和に変わったことだし、多様性とか倫理観とか、保てるように努めたいですね!

 

※注釈含め、個人の解釈、意見です! 

 

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     *1 3が一番弱くて2(とジョーカー)が一番強いトランプゲーム。勝敗の結果によってプレイヤーの身分が変わる。地域によって大貧民と呼び方が変わる、そこ含めて面白いゲーム。

     *2 いわゆる「一般人」的な、とがった個性がない夢主のこと。でも無個性っていったい何なのか、筆者はよく考えてしまう。
     *3 動物や妖怪、モンスター、植物など。幽霊は含んだり含まなかったりする。
     *4 原作キャラが全くないしほぼ出ない、夢主がその世界でどう生活するかを中心に作られた夢。ファンタジー作品やアイドル作品でよく見られる。